「有限会社諫山生活建築研究所」より連載記事 『エコロジーライフを目指して』シリーズ№4 : 住まいの匠


「有限会社諫山生活建築研究所」より連載記事 『エコロジーライフを目指して』シリーズ№4

「有限会社諫山生活建築研究所」よりご依頼を受け、株式会社ティ・アイ・エスより連載記事

『エコロジーライフを目指して』 №4



シリーズ№3で諌山生活建築研究所からバトンタッチし、『実例住宅』について太陽光発電システムの設置に関する検証を行いました。当初は、軽い気持ちでお受けしたのですが、自立環境型住宅を目指して、様々な工夫がなされていることに驚きました。これからその工夫について、太陽光発電システム設置に関する基礎知識も交えご説明させて頂きます。まずは第一の工夫を「実例住宅」の立面図を基に、特徴のある1階と2階が一体化した屋根に太陽光発電システムを設置した場合と、仮に1階の屋根と2階の屋根が分かれている一般の屋根を比較してみました。
                         
 

「実例住宅」の一体化した屋根に、仮にシャープのND-153AUの太陽電池モジュールを設置すると、4列×9段 計36枚 定格出力5.51kwの太陽光発電システムを完成することが可能になります。国が出しているエネルギー白書には、全国で約2,500万戸の一戸建て住宅があり、その70%に平均3.7kw/戸の太陽光発電システムを設置することが可能と試算しています。「実例住宅」では、設計に工夫を加えることにより全国平均の約1.5倍の太陽光発電システムの設置を可能にしています。

 

一方、1階と2階の屋根を分離した一般の屋根では、1階の屋根と2階屋根でそれぞれ4列×2段 8枚 定格出力1.22kW、合計で2.25kWの定格出力に留まり、全国平均の約61%、「実例住宅」の約41%の発電しかできなくなってしまいます。エコに精通した設計の重要性が理解して頂けるかと思います。
 
更に「実例住宅」には工夫が施されています。


 
「実例住宅」の敷地と間取りの見取り図を見ると、建屋を広く、かつ庭を広くし、敷地の有効利用する工夫が見て取れます。太陽光発電システムの設置に関しては、更なる工夫があります。それは太陽電池モジュールを設置する向きです。この見取り図では、ほぼ南向きに太陽電池モジュールが並びます。太陽光発電の場合、発電量は太陽電池モジュールの向きにより可成りの影響を受けます。
 

 
南向きの発電量を100%とすると、西と東で85%になり、発電効率が落ちる北側には通常太陽電池モジュールは設置しません。下記に「実例住宅」の定格出力を基に、向きによる年間推定発電量を比較しました。
 

 
「実例住宅」の年間発電予測をご覧頂くと分かりますように、太陽電池モジュールの設置方向が南と東/西では、年間発電量に約700kwhもの差が生じます。上記から「実例住宅」は、自然エネルギーの利用と家族が生活する環境を最大限に考慮した住宅であると言えます。
 
「実例住宅」には、更に太陽からの自然エネルギーを最大限に受け取る工夫が成されています。それは、太陽光を受ける屋根の勾配です。最も理想的な屋根勾配は、30°と言われていますが、この「実例住宅」は、日本家屋としてそれに近い5寸勾配にて設計されています。
下記に「実例住宅」の勾配の違いによる年間予測発電量を比較してみました。
 

 
年間発電量予測グラフからも分かりますように、日本家屋の寸勾配に於いては、5寸が最も太陽光を受け入れることが出来ます。尚、勾配30°を100%とした場合、0°でも88%の発電が可能です。しかし、勾配0°の屋根に、直接太陽電池モジュールを設置することはありません。それは、モジュールの表面に積もるゴミを除去するには最低7°の勾配が必要なためです。「実例住宅」は、太陽光の入射角にまで気を使われていることが見て取れます。
 
最後に、見過ごせないもう一つの工夫があります。それは、シリーズ№1で紹介された「住宅は夏をむねとすべし」と言う言葉に集約されています。太陽光発電は、7月や8月の暑い日が最も発電量が多いと思われがちですが、一般的なシリコン系太陽電池モジュールでは、4~6月にかけて発電量の多い時期を迎えます。太陽光発電システムの規模を表す定格出力は、電池の表面温度が25℃での値を示しています。温度が1℃上昇する毎に0.45%の発電ロスが生じ、太陽電池モジュールの温度が70℃になると約2割の発電ロスが生じてしまいます。瓦と一体型の太陽光発電システムは、概観は良いのですが放熱が出来ないため夏場に発電量が極端に低下してしまいます。その為、瓦一体型の太陽電池モジュールを取り入れている住宅メーカーでは、太陽電池モジュールの下にアルミの放熱板をしく等、費用を掛けています。
「実例住宅」は、1階から2階まで直線状に伸びる一体化屋根の構造のため、屋根に沿って、太陽電池モジュールを設置すれば、屋根とモジュールの間に空気の通り道ができ、シリーズ№2の「③屋根の断熱効果」により、空気の流れが生じ、太陽電池モジュールから効果的に熱を奪うことが出来ます。結果、無駄な費用を掛けずに、夏場での発電効率アップにつながります。また、屋根とモジュールの間の断熱効果により、太陽電池モジュールを設置しない場合に比べ、※夏は約-10℃、冬は約+5℃の快適断熱効果をもたらします。
※新エネルギー財団(NEF)ホームページより
 

 
以上、太陽光発電システムを設置したと仮定した場合、「実例住宅」からは
①太陽光発電システムの規模を大きくする工夫
②太陽光をより多く取り入れ発電するための設置方向の工夫
③太陽光をより多く取り入れ発電するための屋根勾配の工夫
④太陽電池の表面温度を下げ、発電効率をアップする工夫
をうかがい知ることが出来ます。
これを持ちまして、有限会社諌山生活建築研究所様の自立環境型住宅を目指した『エコロジーライフを目指して』シリーズの完結とさせて頂きます。
 
 
尚、次回から有限会社諌山生活建築研究所様による新シリーズが始まりますので、ご期待ください。

 
 
≪ お問い合わせ先 ≫
有限会社 諫山生活建築研究所
北九州市小倉北区黒原3-2-29
TEL: 093-952-8012
担当:中村 民江
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